保険診療による「腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)」を開始しました
肥満症に関しては、日本でも社会問題化しており、糖尿病や脂質異常症などの肥満にまつわる合併症にかかる医療費も膨大なものとなっています。海外では肥満症に対する治療として胃バイパス術などを中心に外科治療が以前から広く行われています。
日本においても肥満症手術件数は増加傾向であり、その目覚ましい治療効果が注目されています。糖尿病に対する肥満外科治療は従来の内科的治療より効果が優れていることは証明されています。
手術適応はBMI35以上(条件によっては32.5以上)で6か月以上の内科治療を行っても十分な効果が得られず、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の1つ以上を有している方です。
当院では、2020年より自由診療にて本治療を導入しました。その後症例を積み重ね、現在では保険診療による手術[腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)]として実施しています。
肥満手術について
肥満外科治療は日本では1982年に千葉大学で開腹手術による胃バイパス術が施行されたのが最初です。その後術式の改良がすすみ、現在では腹腔鏡手術が一般的です。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は現在唯一の保険適応になっている術式であり、日本で最も施行されている術式です。
- 腹腔鏡で胃をバナナのような形状にして細長くし、胃の容量を減少させます。
- 胃の容量は約100ml~150ml ほどに制限されます。同時に食欲を増進させるホルモンを分泌する胃の上部も切除することで、食欲を抑える効果も期待できます。
- 順調に経過すると術後20~30%程度の体重減少が期待できます。
手術を希望された患者さんは、いきなり手術ではなく、術前半年間の当院の術前減量プログラムを行っていただき、5%の術前減量を目指します。その間にこれまでの生活態度の見直し、食生活の改善、減量に対する意識の向上に努めます。
本治療は非常に効果が高いですが、これまでのような生活態度や食生活が継続すると、リバウンドを起こすことになります。手術をしても数年後には術前と同じ体重に戻ってしまう方もいますので、術前減量プログラムは非常に重要と考えています。
当院では術前プログラムの段階より医師、糖尿病認定看護師、管理栄養士、理学療法士など多職種による介入を行い、月1回の肥満外科治療検討会にて情報を共有して、継続的に治療効果を享受できるよう環境を整えています。
今後本治療は日本でもさらに広がっていくことが予想されます。肥満の改善は医学的観点だけでなく、医療費の抑制という社会経済的観点からも非常に重要です。治療についてご興味がございましたら当科外来にご連絡いただければと思います。